世界最高マシンに込めたトーモク・オリジナリティー

TM開発統括部 部長高梨 孝行
「段ボールという製品は誰でも知っていて、身近で使われており、なおかつ世の中になければならないものです。リサイクル率も高く、環境面でも優れています。そのような段ボールの製造に、我々は誇りを持っています。」
独自の技術による機械開発
段ボール製造において、3枚の段ボール原紙を貼り合わせる工程(以下、「貼合(てんごう)」という)を行うのがコルゲートマシンだ。トーモクの館林工場では貼合速度毎分450mという世界最速のスピードを持つコルゲートマシン『TM450』が稼働している。トーモクがその持てる技術力・ノウハウを盛り込み三菱重工印刷紙工機械㈱と共同で創り上げた、世界最速・最新鋭の機械で ある。見た目には従来機とさほど変わらないように見える。しかし中身は全くの別物。各ユニットに革新的な技術を多数採用している。
従来の世界最速だった毎分400mを50mも上回るTM450。この50mが業界では「次元が違う難易度の高さ」と言われてきた。

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世界最速のオーダーチェンジ
例えば、貼合では巻き長さ4,000m~6,000mほどある段ボール原紙を機械に3本セットし、全長100mほどあるコルゲートマシンの内部を同時に高速で走らせながら波型の段を形成し、両面に貼り合わせていく。「紙継ぎ
」と呼ばれる原紙のオーダーチェンジにより、次の使用原紙に切り替え、連続生産を行っていく。
注意を要するのは、高速で動いている原紙と静止している次の原紙を切り替える瞬間に非常に大きな力が加わること。その力は高速なほど大きくなる。そのため業界では毎分200~250mほどに速度を一度落としてから紙継ぎをするのが一般的であった。しかし速度の変化は、紙にかかる力・接着剤の塗布量・紙へ与える熱量などに変化をもたらし、接着状態の悪化や段ボールシートの形状変化など、品質面に大きな悪影響を及ぼす。また生産性
の面でも、速度が低下した分だけ効率が悪くなる。
このような従来からの課題とともに、世界最速マシンならではの課題にも直面した。速すぎて紙が切れてしまうという問題だ。
「紙継ぎで旧紙と新紙が貼り合わさった時に『パーン』と一瞬にして切れてしまう。切れたのはわかるのですがその瞬間はあまりにも速すぎて見えません。そのような最速機ならではの問題を分析していく。遠心力などの自然力に逆らわなければ実現できないことも多く、これらを一つひとつ解決していくのはまさに“死闘”でした。」と高梨は振り返る。
完成したTM450においては、トップスピード毎分450mを保ったままの紙継ぎを実現しており、これは世界でも他に例がない。

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熱・蒸気を制する
また、コルゲートマシン内部は直径1m、180℃にもなる高温の鉄製ロールが所狭しと並んでいる。厚手で腰がある段ボール原紙を波型に成型し接着するためには、この熱と圧力が欠かせない。ロールには高温の蒸気がボイラーより供給されており、高速で回転している。
毎分450mという高速では、遠心力で蒸気がロールの内側に張り付き、温度が100℃以下まで下がってしまう、つまり水に変化し熱が奪われロール内の温度が均一に保てないことが試作のなかで判明。水はロールの下部に溜まり、そこだけ温度が下がりロールが変形してくる。そ
うなると波型を成型するロール間の隙間(クリアランス)にもバラツキが生じ、波型成形ができない。ロール自体も変形し使い物にならなくなる。
「超高速下でも蒸気の状態を安定させておくにはどうすればいいか。熱や蒸気という“目に見えないもの”の動きを正確に把握しなくてはいけない。我々は独自の開発を重ね、熱と蒸気の流れを研究し、試行錯誤を繰り返しました。」
結果、蒸気の供給から排出に至るまで、独自の機構を盛り込み、安定化させることに成功した。

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ゆったり速く ―確かなモノづくり―
そのほか取り組んだのが、オペレーターの動線を従来の3分の1と大幅に短くすることによる作業性の向上だ。「速度が速くなると余計に人間が忙しくなる、そうではなく、オペレーターがなるべく動かなくてもいいようにということを第一優先にしました。原紙のセットに専念できるよう、セット時間を従来90秒かかっていたものを60秒以下でできるようにしました。生産は従来より速く、効率よく機械が回っていく。にもかかわらず、オ ペレーターの負担はラクになり、疲れない。一つひとつの仕事により専念し、良いモノづくりができる。トーモクがモノづくりや仕事の進め方のコンセプトとしている『ゆったり速く』という概念を元に考案しました。」
このように数々の難題をクリアしTM450は完成した。生産性のほか、暑さ対策や騒音の軽減など労働環境の改善、消費電力やガス使用量の大幅削減による環境対応等も盛り込んだ。

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進化する技術を牽引し続ける
段ボール箱は寸法や箱の形状、紙の種類や材質構成、印刷デザインなど全ての仕様がオーダーメイドの商品である。全国規模の大手メーカーの商品も扱っており、1ロット数千箱~数万箱と規模が大きくなることも多い一方多品種小ロットの対応も求められている。
そのため生産ラインでは、膨大な種類と数量の製品を作り分けられる対応力、瞬時にオーダーチェンジが行える機動力、大規模ロットを効率よく作り上げる生産性など高い技術が求められ、段ボール工場の経営にとっても極めて重要な要素となる。トーモクは創業よりそこに焦点を定め、業界に先駆けて取り組んできた。
社運を賭して北海道から関東エリアに進出した横浜工場(1959年)の毎分127m、館林工場(1981年)の毎
分250m、小牧工場(1994年)の毎分330m、岩槻工場(2003年)の毎分400m。
トーモクが開発してきたコルゲートマシンはいずれも当時世界一の生産性を誇ったものばかりであり、世界最速を自ら更新し続けてきた。
そのほか段ボール製品の積み付けロボット導入による加工工程の大幅省人化、印刷面の画像検査装置導入による品質向上など、当社が開発しその後業界のスタンダードとなっていったものは枚挙にいとまがない。
常に新しいことや困難なことに率先して取り組んできたトーモクのチャレンジ精神。それはこのイノベーションの歴史に貫かれている。

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最高の技術で育てる、最高の人材
トーモクがそこまで独自の技術にこだわるのは、なぜなのか。
「現状の機械に慣れ切ってしまうと、社員の技量が上がらない。」高梨はこう断言する。その言葉にトーモクの人材育成にかける想いが読みとれる。
「新しいものを考えるには、今の機械を熟知しなければ新しい思考は出てきません。『新しい技術でこんなことができるんだ』という成功を体験をすれば、『じゃあこんなことはできないかな』と社員が自ら考えて動き、提案するようになっていく。そのサイクルが技量を高めていくのです。」
「技術の開発だけが目的ではありません。その過程で人を育てたいということなのです。会社の本当の武器は、機械ではなく結局は人だと思っています。ですが、人を育てるために機械を進化させなければ、人は育たないと思っています。」
「機械を自分たちの技量に合わせた速度で運転するのはラクですが、そこに成長はありません。むしろ機械の最
大性能に合わせて自分たちの技量を高めていこうという考え方が、トーモクには貫かれています。常に機械能力の9割以上を発揮できるよう我々は目指しています。」
世界最速の機械を操作し、その性能を最大限に引き出そうとするなら、オペレーターも世界一の技術を身につけなくてはならない。トップの環境に身を置いてこそ、人もトップを目指すのである。難易度の高い開発にトーモクが挑むのは“人のさらなる成長のため”という理由に尽きるのだ。
「毎分450mのコルゲートマシンも、より精細で高性能な機械を実現するための通過点に過ぎません。今はオペレーターの動線・品質・生産性を兼ね備えた高精度なコルゲートマシンを作ろうとしています。」
更に高梨はいま、「現在5人いるオペレーターを省人化する」という夢も描いている。
「オペレーターという概念ではなく監督者という発想で監督者一人がいれば動かせる全自動マシンの開発が、技術開発の次の挑戦です。」

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技術系学生に求めるもの
「トーモクの一番の魅力は、すでにある産業機械や潮流にそのまま乗ろうとしないこと。他社を追いかけるとか機械メーカーに頼り切ってしまうとか、メーカーから提案されたものを鵜呑みにするとか、そういうことは絶対にしない。新しい機械を導入する際は、新しい他社にない技術、自分たちの手によるオリジナリティーを必ず取り入れるようにしています。」
「技術系学生に求める資質は、とにかく元気さ。頭で考えず体で考える人。挨拶をきちんとできる人。挨拶ができるということは感謝ができるということです。大きな声で感謝の気持ちを持って声を発せられる人は絶対に成
功します。」
会社から与えられたビジョンをこなそうとするのでは、人はそこまでしか成長できない。そうではなく、仕事をしていく中で自ずと自分のビジョンや目標・夢は定まっていくものだ。トーモクは会社のビジョンを押し付けるのではなく、最低限これは覚えておいてほしいという物差しを示すに過ぎない。
「失敗を恐れず、チャレンジして、やりたいことを実現する。それができるのがトーモクという会社です。ぜひ皆さんも、不可能を可能にする、そんなチャンスをつかみに来てください。」

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トーモクの仕事

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